相続時精算課税の選択

2017/5/15

「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第32号

 

ご覧いただきありがとうございます。

暦年贈与の場合、年間110万円以下の贈与については課税されることなく生前に財産を引き継ぐことが出来ることを前回までにお話してきました。

相続の開始があった時に多額の相続税が課税されると予想される場合には、この110万円という金額の範囲内で複数年に渡って継続して贈与をすることで、着実に非課税で生前に財産の移転が出来るので、相続税を安くすませるためには便利な規定なのですが、一方で、相続税は課されないと予想される場合には、わざわざ毎年110万円の範囲内で暦年贈与を繰り返すよりも、早めに一気に財産を移転したいと思いませんでしょうか?

今回はこの点に着目したお話をしたいと思います。

  

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相続時精算課税の選択

 

贈与年の1月1日において60歳以上の父母又は祖父母から、その者の推定相続人である20歳以上の子又は孫に対して贈与により財産を移転した場合において、その贈与税の申告期限である翌年2月1日から3月15日までの間に贈与者ごとに作成した相続時精算課税選択届出書を贈与税の申告書に添付して納税地の所轄税務署長に提出したときは、贈与財産の価額の合計額から特別控除額(累計で最高2500万円)を控除することができます。

 

贈与財産の価額の合計額が2500万円を超えるときには、その超える部分の金額に一律20%の税率で贈与税が課税されます。

 

複数年に渡って贈与される場合には、前年以前に既に特別控除された後の残額がその年の特別控除額となり、その残額を超える部分の金額に一律20%の税率で贈与税が課税されます。

 

もちろん、これは相続時精算課税を選択した場合にのみ適用される特別控除額及び税率となりますので、相続時精算課税を選択しなかった場合には、通常の暦年課税贈与となり、110万円の基礎控除額を控除したうえで、贈与税の税率を乗じて贈与税額を計算することとなります。

 

相続時精算課税に係る贈与者が死亡した際には、相続時精算課税で贈与された財産の価額は、相続税の課税価格に持ち戻して相続税が計算されることとなります。

 

相続時精算課税に係る受贈者は、その贈与者からの相続又は遺贈により取得した財産に相続時精算課税により取得した贈与財産の価額を合計して相続税の課税価格を計算することとなります。

 

相続により取得する財産の価額が少なくて相続税が課税されないと予想される場合には、相続時精算課税を適用して一気に2500万円までの財産を非課税で移転しておき、相続の開始時に持ち戻されたとしても、相続税も課税されないという、この制度の恩恵を十分に受けることが出来ます。

 

国にとっても高齢者から若い消費世代に早期に財産を移転することを促すことが出来て好都合ですよね。

 

なお、この時に持ち戻される贈与財産の価額は、その贈与時の価額(時価)となります。ですので、値上がりしそうな財産は早めに移転することで節税対策にもつながります。

 

また、相続時精算課税を適用したことにより納付していた贈与税額(一律20%で計算)がある場合には、その納付済みの贈与税額を、算出された相続税額から控除し、控除しきれない金額がある時には還付されることとなります。

 

このようなことから、相続時精算課税に係る贈与税については、相続税の前払い、仮払いとしての性格を持つものであります。

 

相続時精算課税を適用するにあたっての注意点は幾つかあるのですが、1番に気を付けなければならないのは、相続時精算課税選択届出書は一度提出するとその取り消しをすることが出来ないということであります。

 

相続の開始があった時に、多額の相続財産があるので相続税が課税されると予想するか、又は、相続税は課税されないと予想するか、じっくりと見極めたうえで、相続時精算課税選択届出書の提出の是非を判断をすることが必要となります。

 

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現状は大した財産家ではないけれど、将来、絶対に大金持ちになるという人は、この制度は選択しない方がいいですね。(笑)

 

 

ここまでご覧くださいましてありがとうございました。

 

読者の皆様が世界で一番幸せになることを心よりお祈り申し上げます。

  

さくさ