株主優待券の提供を受けた個人株主の課税関係
「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第44号
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<前ふり>
先週末に、彦根城築城410年記念のために滋賀県に初めてやって来た航空自衛隊ブルーインパルスのショーを見に行ってきました。僕にとってブルーインパルスを肉眼で見るのは初めての経験です。期待通り、空気を裂くエンジン音と、青空で光る機体、そしてそこから放出される白い飛行機雲に歓喜してしまいました。
ちなみに、ブルーインパルスから放出される白い煙はスピンドルオイルと呼ばれる機械油で、エンジンの排気口に噴射することで気化し、それが空中で冷却されることにより白い飛行機雲に変化する仕組みとなっています。
元々の拠点は松島基地。今回、彦根へは岐阜の基地を経由してやってきました。彦根市の人口は11万人程度ですが、今回のショーには約5万人が会場周辺に来場したので、予想通り市内は大渋滞となってましたね。
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さて今回は、株主優待券の提供を受けた個人株主の課税関係についてお話ししたいと思います。
株主優待券の提供を受けた個人株主の課税関係
☆株主優待を行う法人が利益処分として行わない限り、株主優待を受けた個人株主は、その株主優待を配当所得とは取り扱わないで、雑所得として取り扱います。以下、雑所得の計算について的を絞って簡潔にお話しします。
雑所得は、公的年金等と公的年金等以外に区分して計算しますが、株主優待は公的年金等以外の区分に該当します。
公的年金等以外の雑所得の金額の計算は、その年中における雑所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算します。
雑所得の金額は、総所得金額を構成しますが、雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、他の各種所得の金額から控除することは出来ません。損益通算ができないということです
年末調整されている給与所得者であっても、雑所得の金額(正確には、給与所得及び退職所得以外の所得の金額)の合計額が20万円を超えると、確定申告が必要となります。
☆ここからは私見も交えますが、
株主優待の収入金額は、すぐに換金可能な、現金と同じような金券であればその額面金額にて、何らかの商品の提供であればその商品の小売金額のだいたいの原価相当(例:60%)の金額にて、総収入金額に算入すれば”おそらく”問題ないでしょう。(但し、こんなことをしている人がいるなんて聞いたことはありません。それくらい個人も課税庁側も金額が分かりづらいのだと思われます。)
なお、株主優待の利用時に何%か割引きが出来るような株主優待券の場合には、受け取った株主はそれを利用するか利用しないかは受け取った時点では分からないので、その時点では雑所得の総収入金額に算入する必要はないでしょう。(売却すれば別ですが。)
株主優待は課税するという規定があるにもかかわらず、今のところ現実的にはほとんど機能していないと思われます。派手にやらなければ、ちょっと位スピード違反をしても直ぐに交通違反で捕まらないのと同じようなものでしょうね、今のところは。
なお、株主優待を提供する一部の法人には、案内サイトなどで、「***株以上の株主には〇〇〇円相当の商品を提供する」と記されていることが多いので、参考にはなると思います。
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読者の皆様が宇宙で一番幸せになることを心よりお祈り申し上げます。
さくさ
株主優待割引券の取り扱い2
「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第43号
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<前ふり>
趣味で飼育しているオオクワガタがいっせいに羽化を始めました。今年は若干オスが多いように感じます。オオヒラタケの菌糸ビンの縁に蛹室を作っているサナギなら一目で羽化したことが分かるのですが、内側に蛹室を作っているものは目視できなくて状況が分かりません。菌糸ビンに耳を当てて、そっと中の様子を音で伺います。何やら動く物音が聞こえれば★にはなっていないので、ひとまず安心です。あと数週間で菌糸ビンから掘出す時期になり、楽しみにしています。
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さて今回も引き続き、株主優待券を提供した法人の課税関係についてお話ししたいと思います。
株主優待割引券の取り扱い2
法人がその株主に対して、自社事業であるサービスの提供時又は物品の販売時などに使用することが出来る株主優待券を交付した場合の法人の取り扱いについてお話しします。
・現金同様に幾らでも使用することが出来る株主優待券の場合
交際費とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用をいいます。
株主優待割引券に当てはめてみると、法人の株主は事業に関係のある者に該当します。
株主優待割の目的は株主の歓心を買って株主としての地位を維持する関係を構築することになるでしょう。つまり、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為に該当します。
現金と同様に使用できる株主優待券であれば、売上金額に達するまで株主優待券で支払うことが可能です。つまり、売上原価の金額を超えることになる前提ですので、法人が支出する費用にも該当します。
従って、現金と同様に使用することができる株主優待券の提供は、その提供する法人の各事業年度の所得の金額の計算において、交際費の額として取り扱われます。
ついでに話をしておくと、株主優待券をその法人の店舗等で使用するのではなく、株主優待券をその法人に送付することにより、その法人から一定の商品の提供を受けることが出来るような特典の付いた株主優待券がありますが、
これについても同様に、その法人の課税所得の金額の計算上、交際費として取り扱うことになります。
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さくさ
株主優待割引券の取り扱い1
「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第42号
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<前ふり>
近所に生牡蠣のおいしい店を発見しました。仕事が余りにも早く終わったので、仕事仲間と一緒に、一軒目はまだ明るいうちから営業開始している居酒屋でビールをグイッと飲んでのどの渇きを吹き飛ばし、二軒目にはあらかじめ目星をつけていた生牡蠣を出してくれるという店に行きました。産地別に3種類を食べ比べしたのですが、食感も旨味も臭味もそれぞれ違っており、海の味を堪能できました。う~ん、最高!やっぱり自然は美味しい。
さて今回も引き続き、株主総会に関係したことをお話ししたいと思います。法人がその株主に対して、自社事業であるサービスの提供時又は物品の販売時に使用することが出来る株主優待券を交付した場合の交際費課税の取り扱いはどのようになるのでしょうか。
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株主優待割引券の取り扱い
・株主優待割引券を使用して代金の一部割引が出来る場合
交際費とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用をいいます。
これを株主優待割引券に当てはめてみると、株主は事業に関係のある者になります。株主優待割引の目的は株主の歓心を買って株主としての地位を維持する関係を構築することになるでしょう。つまり、接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為に該当します。
あとは法人に支出が伴うかどうかです。
対価の一定割合のみ割引できる株主優待券であれば、その一定割合が売上高に対する原価相当を超えるか超えないかで、支出が伴うかどうかが分かり、交際費となるかならないかが判断できます。例えば、原価率が40%であれば、1万円の売上高に対して4000円が原価相当になります。株主優待割引により、60%を超える割引が適用されれば、割引額が原価部分まで食い込んでくることになり、法人としては株主優待券を利用した者に対しての支出が生じる結果となります。従って、このように法人に支出が生じるような場合には、その株主優待については交際費に該当することになります。
一方で、株主優待割引が一律10%とか20%などのように、原価相当を超えない場合には、法人側に株主優待の利用者に対する支出が発生することには該当しませんので、単なる値引きとして処理が出来ることになります。
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さくさ
株主総会出席者への手土産等
「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第41号
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<前ふり>
昨晩は、ゴールデンウィーク中に開催したお祭りの“反省会”と称する“飲み会”に参加するため、近所の神社の会館に行ってきました。僕はその神社の氏子総代をしているのですが、参加者の皆さんはだいたい、商売っ気のない、見返りを求めない奉仕活動なんですよね。こういった形で地域の方々と交わるのはとても楽しいです。
さて、前回に引き続き、株主総会に関係して支出される費用についてお話ししたいと思います。
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株主総会出席者への手土産等
法人が株主総会に出席した株主に対して、飲食を振舞ったり、手土産を持たせたりした場合の取り扱いについて、交際費に該当するか、該当しないかで、その法人の課税所得の計算に影響しますので、その観点でお話します。
・株主総会会場で提供される飲料、茶菓子
交際費には該当しません。お茶や、コーヒーなどは株主総会でごく普通に提供されますよね。これは会議費などで会計処理を行い、その金額はその法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されます。
但し、アルコール類やコース料理の提供など明らかに行き過ぎた行為(こんな総会見たことないですが、同族企業ならあり得るかもしれません。)であるならば、それは通常の会議等の目的から逸脱した行為ですので、接待等とみなされて交際費に該当することになります。
・株主総会出席者に提供される手土産
菓子折りやお茶葉の詰め合わせなど、他社から購入したものの提供は交際費に該当します。株主によっては、好きなお茶の銘柄を指定する方がいるかもしれませんね(笑)。
一方で、自社の新製品などを株主に手土産として提供した場合には、これは広告宣伝費として認められることになります。とはいえ、あくまでも常識の範囲内の提供ですので、度が過ぎると交際費になります。
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さくさ
株主総会出席者の旅費の取り扱い
「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第40号
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<前ふり>
職場の人から淡竹(はちく)を頂きました。淡竹は竹の子とは違って、地面を掘って採集するのではなく、地面の上に生えているものを採集します。竹の子よりも灰汁が少なく、やわらかい食感で美味ですね。そういえば、職場の近くを車で走っていると、それらしきものが道沿いの至る所にニョキニョキと生えているのを見かけました。なんだか欲しい誘惑に駆られてしまいそうです(笑)。
さて、しばらくの間、相続税・贈与税関係のお話をしてきましたが、ちょっと趣向を変えてみたいと思います。
3月決算法人であれば、早ければ5月、監査法人による会計監査が実施される会社であれば6月には株主総会が実施されることと思います。そこで、株主総会に関係して支出される費用についてお話ししたいと思います。
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株主総会出席者の旅費の取り扱い
法人が株主総会の開催に際して、株主に旅費を支給する場合の取り扱いは次のとおりです。交際費に該当するか、該当しないかで、その法人の課税所得の計算に影響しますので、その観点でお話します。
・株主総会会場の最寄り駅から会場までのシャトルバスなどの費用
交際費には該当しません。交通費や雑費等で会計処理を行い、その金額はその法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入されます。
・株主総会に出席する株主の自宅から会場までの旅費
このような費用を支出する会社がどの程度あるのかという話にもなりそうですが、同族会社などの元役員で、現在は一線を退いているが現在も株主として影響力が強い方などに対しては、総合的な判断で支給することもあるでしょう。大株主に対しても同様です。
判断に悩みそうですが、懇親や接待、総会対策の要素が含まれるでしょうから、交際費に該当します。一定の議決権を確保して株主総会を無事に成立させるためには必要となるのかもしれませんね。もっとも先に委任状を入手できれば手っ取り早いのですが。
・総会後に行う懇親会の会場までのタクシー代等
交際費に該当します。総会後の懇親会は、株主との親睦を深めるための費用に該当しますので、その内容がたとえ交通費であっても、ここは目的で判断し交際費となります。
なお、消費税については、国内の交通費は全て、費用を支出する法人の課税仕入れに該当します。
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さくさ
相続時精算課税を選択した場合のデメリット
「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第39号
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<前ふり>
日焼けした鼻のてっぺんの皮がうっすらとめくれてきました。
先週末は娘の運動会の応援で、腕と顔が真っ赤に日焼けしてしまいました。ちょっとしたヤケドみたいな感じで。
運動会では、娘の走りに感動しました。一生懸命丸出しの走り方で、全員参加リレーの出番の時には、終盤で足の速い男の子に抜かれましたが、僕は、一切の手抜きをせずに全力を出し切る娘の走りに誇らしさを感じました。
よくがんばったね、ありがとう。
自分の日焼けを見て、誇らしさを思い出します。
さて前回は、相続時精算課税の適用を受けた場合のメリットについて纏めてお話ししました。今回はこれまでお話ししていない内容も加えて、デメリットについても纏めてお話ししたいと思います。
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相続時精算課税を選択した場合のデメリット
1.相続時精算課税選択届出書は撤回できない
相続時精算課税は、届出書を提出したら最後、その届出の撤回をすることができません。
届出書の提出後は暦年贈与の年間110万円の非課税規定が適用されませんので、こんなはずではなかったのに、ということのないよう、よく考えることが必要です。
計画と踏ん切りが大切ですね。
2.相続税が課税される可能性がある
相続時精算課税制度は、相続の開始前までに、財産を2500万円まで贈与税が無税になるように移転することができますが、贈与時の財産の価額は相続税の課税価格に持ち戻されますので、相続時に相続税の発生する可能性があります。
3.税金の負担が増す可能性がある
相続時精算課税適用者が特定贈与者よりも先に死亡した場合には債務控除の適用を受けることができずに特定贈与者に係る相続税の負担をすることになるので、税金の負担が増す可能性があります。
4.贈与時よりも相続時に財産が値下がりしていると相続税の負担が増す
価格変動のある財産の贈与については、”諸刃の剣”ですね。相続税の課税価格に持ち戻される財産の価額は贈与時の価額ですので、価格変動次第で、メリットにもなるしデメリットにもなる可能性があります。
5.小規模宅地等の特例の適用を受けることができない
相続時精算課税による贈与により取得した財産は、相続又は遺贈により取得した財産とならないため、小規模宅地等の特例の対象から除外されてしまいます。
なお、小規模宅地等の特例は、相続人が最小限必要な生活を送れるように、一定の居住用宅地や事業用宅地などについては相続税の評価額が減額される制度であります。
6.物納財産にすることができない
相続時精算課税の適用を受けた財産については、相続時に物納にすることができません。(ちなみに、暦年贈与を採用している場合には、相続開始前3年以内の贈与財産である生前贈与加算の対象財産は、物納することができます。)
いかがでしょうか。相続時精算課税の適用を受けた場合には、たとえ少額の資産の贈与であっても毎年申告する必要があるので、その手間も考えるとそれもデメリットといえるかもしれませんが、毎回きちんと贈与記録をしておけば申告時に慌てることはないでしょう。
ここまでご覧くださいましてありがとうございました。
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さくさ
相続時精算課税を選択した場合のメリット
「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第38号
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相続時精算課税の適用を受けると2500万円まで、それが住宅取得等資金であれば最高で3700万円までが一定の要件のもと、贈与税が課税されることなく直系尊属から直系卑属である推定相続人又は孫に財産の移転が出来るということでした。選択を判断する場面についてはこれまでも少しずつ触れておりましたが、おさらいとしてこの制度のメリットについてお話ししたいと思います。
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相続時精算課税を選択した場合のメリット
1.2500万円まで贈与税が無税
2500万円までは贈与税が無税となります。しかし、相続税の課税価格に贈与時の時価が持ち戻されますので、相続税が課税される可能性があります。
相続税の基礎控除額は3000万円+法定相続人の数×600万円ですので、その範囲内に収まるかどうかを判断基準の一つにすると良いでしょう。
2.早期に一時に財産の移転が可能
相続の開始まで待たずに財産を2500万円まで一時に無税で移転することができます。お金が必要な若い世代に一定額までは課税されることなく財産の移転が可能ですね。
3.将来値上がりする予定の財産を値上がり前の金額で移転することが可能
相続時に値上がっていると見込まれる財産について、相続時精算課税の適用を受けて予め贈与しておくと、相続税の課税価格に持ち戻される財産の価額は贈与時の価額となるため相続税を低く抑えることができます。
4.収益物件を生前に移転しておくことが可能
収益物件から生み出される収益が被相続人に貯まれば、それも相続時に相続税の課税対象となりますが、先に贈与をしておけば、贈与後の収益については受贈者の所得となり、相続税の課税価格に算入しないようにすることができます。例えば賃貸マンションなどが考えられるでしょう。
次回は、デメリットの方もお話ししたいと思います。
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さくさ
住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
「サラリーマン税理士さくさの納税のすすめ」第37号
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前回は住宅取得等資金の贈与に係る相続時精算課税の特例をお話ししました。直系尊属から直系卑属である推定相続人又は孫への相続時精算課税贈与について、直系尊属の年齢要件が緩和されて60歳未満であっても相続時精算課税が適用となることや、最高で1200万円の非課税枠が加算されて合計で3700万円までが贈与時に課税されずに住宅取得のための金銭を贈与できるということでした。
前回は、以上のように相続時精算課税の適用という形でお話ししましたが、何も相続時精算課税を適用しなくても、住宅取得等資金の贈与については、単独で非課税規定を適用することができます。この場合、非課税枠を超える部分の贈与については暦年課税とすることとなります。
今回も、贈与財産が住宅の新築や取得、増改築のための資金である場合の特例についてお話しします。
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住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
父母又は祖父母などの直系尊属からの贈与により、その年1月1日において20歳以上である直系卑属が、自己の居住の用に供する家屋の新築、取得、又は増改築等の対価に充てるための金銭(住宅取得等資金)を取得した場合で一定の要件に該当するときは、次の非課税限度額までの金額について贈与税が非課税となります。
≪非課税限度額≫
平成29年度の非課税限度額は、省エネ等住宅用の取得等資金であれば1200万円、それ以外の住宅用であれば700万円です。将来的に消費税が増税されて8%から10%になると、更に非課税枠が増枠される予定です。
≪受贈者の要件≫
前回の相続時精算課税の特例とほぼ同じで次の通りです。
・贈与者の直系卑属であること
・贈与年の1月1日で20歳以上であること
・自己の配偶者や親族などの特殊関係者から住宅の取得等をしないこと
・贈与年の翌年3月15日までに住宅取得等資金の全額を充てて居住用家屋の新築、取得又は増改築を行うこと(受贈者の所有は共有でも可)
・贈与年の翌年3月15日までにその家屋に居住すること又は同日後遅滞なく居住の用に供することが確実であると認められること(年末までに居住することが必要)
・合計所得金額が2000万円以下であること
・平成21年から平成26年分までの贈与税の申告で住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用を受けていないこと
居住用家屋の新築、取得又は増改築等の要件
(1)新築又は取得の要件
・日本国内にある居住用家屋であること
・新築、又は取得の場合、登記上の面積が50㎡以上240㎡以下で、かつ店舗併用住宅等の場合には家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
なお、取得の場合には、次の“いずれかにも”該当すること
・建売新築の居住用住宅であること
・中古住宅は、取得の日前20年以内(耐火建築物なら25年以内)に建築されたものであること
・中古住宅は、地震に対する安全性基準に適合されると証明されたものであること
・中古住宅は、耐震改修を行うことについて都道府県知事などに申請し耐震改修工事が行われたことの証明がされたものであること
(2)増改築の要件
・日本国内にある居住用家屋であること
・増改築後の登記上の面積が50㎡以上240㎡以下で、かつ店舗併用住宅等の場合には家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
・増改築工事は自己所有の居住用家屋に対して行われたもので、一定の工事証明がされたものであること
・増改築の工事費用が100万円以上であること
住宅取得等資金の贈与税の非課税の適用については、あくまでも“金銭”の贈与であることが前提です。有価証券、金の延べ棒などを贈与するのであれば、くれぐれも事前の換金をお忘れなく。
ここまでご覧くださいましてありがとうございました。
読者の皆様が世界で一番幸せになることを心よりお祈り申し上げます。
さくさ